プロ野球(主にホークス)考察ブログ

野球の記事には旬と味わいが必要だ。旬を捉えるのは新聞記者にお任せするとして味わいの部分を探求していくブログです。

甲斐キャノンの1年

日本シリーズを席巻した「甲斐キャノン」素晴らしかったですね。

今シーズン通算の盗塁阻止率は4割超え、そして日本シリーズでは10割。

一般的に投球をとってから二塁に届くまでの時間は1.8秒をきると超一流と言われますが、甲斐は1.7秒台を何度もたたき出します。

そして、「投げるスピード=肩の強さ」が特に取り上げられますが、実際は「ボールをとる」「ボールを握る」「体を起こす」「投球動作に入る」「投げる」と5つの動作が関連しており、これらを高い次元で融合できているのはもちろんこと、特に個人的には「体を起こす」から「投球動作に入る」までの無駄が少ないのが素晴らしいと感じます。

 

そして、これはよくテレビでもとりあげられるのですが、この体を起こすから投球動作に入るまでの速さを実現しているのがフットワーク、通称「捕球時に左足を一歩前に出す」です。

 

なぜ、左足を一歩前に出すのがここまでクローズアップされるのか。

そうすることで、「捕球=静」から「投げる=動」にいくタイムロスをなくせるので効率的なのは当たり前ですが、150km近いボール(時には変化球)を体を動かしながら捕ること自体難易度が高いだけでなく、まして足という基盤部分を動かしながら捕球するのは相当の技術が必要なので、まさに「言うは易し、行うは難し」です。

そしてこれを可能にしているのが強靭かつ俊敏な下半身です。

身体はあまり大きくないですが、太もも回りの筋肉がすごいので、上記の技術面での反復練習+それを可能にする基礎体力面での反復練習を相当につんできたということでしょう。

 

ただ、シーズン前半の甲斐は苦しんでいました。

 

今となっては信じられませんが4月12日時点の盗塁阻止率はなんと.091。

投手陣がバタついていた+控え捕手の高谷がけがで離脱したのもあって無理できない状況だったのはありますが、実はこれは春のキャンプから達川ヘッドコーチに予見されていて、「甲斐は筋肉をつけすぎて俊敏性が落ちたのでやばい」としきりにインタビューで回答している姿が印象的でした。

選手は進歩しようとして(恐らく打撃力強化)体を大きくしたのに、結果として一番の長所である下半身の俊敏性が失われしまった。なんとも皮肉な結果です。

 

そしてシーズンを重ねるうちに、特に後半からはもう甲斐からは誰も走れないだろうなというぐらいの雰囲気をまた作っていき、日本シリーズにつながりました。

春先からシーズン中の変化、春先の試練をどう乗り越えていったのかを語られた記事はあまりみかけないのが残念なのですが、シーズンオフになってその辺りを解説者が誰か聞き出してくれないかなと期待しています。

 

自分の仮説としてはシーズンが重ねるにつれて、市川を緊急獲得したり高谷も戻ってきたりで、また競争意識が生まれて自身の強みに意識的に原点回帰する時があったのではないかと。もう一つは少し疲れも出てきてオフにつけた大きな筋肉が少し落ちて返ってキレが増したのではないかということで、精神面と体力面での変化があったのではないかと想像します。

 

そして、来年は今年の反省をうまく活かして、シーズンスタートから全開の甲斐キャノンを期待、そしていよいよ正捕手としてのシーズンになることを期待したいところです。(去年以上に日本シリーズMVPもあり取材が殺到して練習時間もままならなそうなのが心配ですが。。。)